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開放弦とは、弦を左手指で押さえていない状態の弦を指します。開放弦を弾いたときに振動する弦の長さは、その楽器にとって最も長くなります。しかも楽器と弦が直接接触している糸枕(ナット)と駒(ブリッジ)を節として振動するため、弦の振動が最も楽器に伝わりやすい状態といえます。言い換えれば、その楽器のもつ最高の響きを得られる可能性があるのが開放弦であるとも言えます。右手での発音が直接音質に反映されるため、開放弦の音を聴くとその人のボウイング技術の程度が分かってしまいます。左手指で弦を押さえていないためヴィブラートはかかりませんが、使い方によっては最高の響きを引き出せるのが開放弦なのです。
基礎的なボウイングの練習をするとき、普通は開放弦を使います。このときに注意することは、音の初め・弓の返し・持続音の音量や音質が一定であるかなど、右手にとっては基本的なものばかりです。実際は、このボウイングの練習自体が開放弦を弾く練習と同じということになります。
ただ、こういう練習だけでは楽曲の中で開放弦を使いこなすことはできません。一定の音量・音質で弾けることはもちろんですが、その音色に変化をつける練習も必要になってきます。詳しいことは音量・音質を決定する要因の項にゆずりますが、弦にかかる重み・弓のスピード・駒からの距離を巧みに調節することによってその楽曲にふさわしい音色をつくりだしていくのです。
ボウイングの練習は開放弦でしても、楽曲の中で開放弦はほとんど使わないという人がよくいます。開放弦にはヴィブラートがかからないという大きな欠点があり、ゆっくりとした曲想のときには使いにくいのは確かです。しかし、ヴィブラートがかからないというだけで、その楽器のもつ最高の響きを引き出せるという長所を捨ててしまうのは余りにも勿体ないと思うのです。弾いている楽器の能力を最高に引き出すためにも、自分のボウイングの技術をより高度に磨き、使える場面では積極的に開放弦を使っていきたいものです。