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チェロ奏法−左手1


目次


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はじめに

左手の役割

 指板を持つ弦楽器は、ほとんどのものが左手を使って音高を変化させます。ギターなどフレットを持つものとチェロなどフレットを持たないものとで指板を押さえる技術はかなり違ってきますが、しっかりと弦を押さえないと弦 がうまく振動せず音が響かなくなる点では共通しています。フレットを持たない弦楽器では、指板上の指の位置が直接音高を決めます。しかも、押さえ方(重みののせ方)ひとつで音質まで変わってきます。また、ヴィブラート・トリル・ポルタメントなど、装飾的な音形をつくるのも左手の役目です。音高の決定・音色の変化・音のつながり・リズム・音の装飾など、楽器を響かせたあとの、音楽をつくる上での鍵を握っていることになります。
(たまに右手で指板を押さえる人−例:チャップリン−がいますが、その人の場合は、右手と左手を入れ換えてこのページを読んで下さい。)

左手の練習の前に

 チェロを構えたときに、両肩・両腕・両手の力を抜くことができるかを確認します(参照:構えかた)。チェロを持つ前の座った状態でできていても、持ったとたんに力が入ってしまうこともあります。この脱力の状態は、チェロを弾いていく上で最も重要な要素の一つになってきますので、早いうちに身につけておいたほうが後々楽です。


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フィンガリングの基本

音高の決め方

 ギターの指板には、「フレット」というものが付いています。これは、音高を決めるための部品です。1フレット分だけ弦長を短くすると、音高が半音上がります。押さえる場所はフレットとフレットの間で、押さえた場所からみて胴体側のフレットに弦が当たって音高が決まります。
 チェロの指板には、フレットが付いていません。したがって、押さえた場所から駒までの弦の長さで音高が決まります。ギターでいうと、フレットの真上を押さえていることになります。演奏している時に指の押さえる場所を指板上に記録していったとしたら、ほぼ半音きざみのフレット状に印がついていくはずです。私が実際に演奏するときは、指板上にフレットのようなものが頭の中に浮かんでおり、その上を指で押さえています。

弦を押さえるための力

 弦を押さえるためには、力がいります。どういう力なのか考えてみましょう。弦を押さえるためには、いくつかの力のかけ方が可能です(以下、ネックポジションの場合)。

  1. ネックをつまむ(握る力)
  2. ネックを引っ張る(引く力)
  3. 腕をネックにぶら下げる(重力)

 1.ですが、初心者がまずするのがこの押さえ方です。1stポジションだけのうちはよいのですが、拡張ポジションやポジション移動を伴うようになると、ネックをつまんでしまっているために動かすのが容易ではありません。
 2.は、言い換えると腕で抱え込む力で押さえているとでもいうのでしょうか。ネックはつまんでいないものの、腕の力で楽器を押さえ込んでいるような形になります。この場合も、ポジション移動などはしにくいでしょう。
 以上2つの押さえ方は、演奏がしにくいばかりでなく、弾いたときの音質にも影響してきます。チェロは、弦を振動させて音を出し、それを箱(胴体)で共鳴させて大きくしています。しかし、振動しているのはそこだけではありません。床、エンドピンの先からネック、ヘッドの部分まで楽器全体が共鳴して振動しています。ネックをつまんだり押さえ込んだりするということは、このネック〜ヘッドにかけての振動を弱めてしまうことになります。胴体ともつながっているので、そちらの振動の仕方にも影響してきます。
 3.は、指先と肩で腕をぶら下げているような状態です。指先で腕の重みを支えている力だけが入っています。この押さえ方では、ポジション移動も楽にできます。また、腕がフリーな状態のために余り振動の邪魔をすることもありません。余分な力が入っていないので、疲れも少ないです。私は、この3.の押さえ方が一番合理的だと思っています。

左腕の重さののせ方の練習

左手ぶら下げ姿−正面(絵1)左手ぶら下げ姿−左側(絵2)
 まず、ネックの適当なところを左手で握ります。手の形は、親指の指先が薬指か中指と当たるようにします(絵1,2)。手の小さい人は、当たらなくても大体それらしい場所に親指があればいいです。
 左手の場所はそのままで、両肩の力を抜いていき、左腕がネックに腕がぶら下がったような状態にします。そのときの上側4本の指と指板面とのなす角度は、直角にはなっていないはずです。どちらかといえば、地面の水平面に直角になっていると思います。
 この状態が、左手で弦を押さえるための基本になります。手のひら〜指の付け根ににかかっている重みを、指先にのせ換えればいいのです。

弦の上に指を並べる

左手指並べ姿−正面(絵3)左手指並べ姿−左側(絵4)
 左手の基本的な形は、上の絵を参考にして下さい(絵3,4)。
 まず、一本の弦の上に指を4本とも並べてみます。最初はC線がいいでしょう。指の角度は指板面に直角ではなく水平面に直角に近くします。手の力を抜いて楽な状態で並べると、大体各指が同じ間隔になるはずです。親指は大体中指か薬指の向かいに来て、関節は少し曲がっています。
 指〜手のひらのつくる形は、ヘッドの方からみて丸くなるようにします。親指付け根の関節がつぶれてへちゃげているのはネックを握ってしまっている状態ですので、力を抜いていくと丸くなるはずです。手の甲〜上腕にかけてのラインは、大体直線になります。親指付け根の関節がへちゃげていると手首が落ち込んでしまうので、このラインは一つのチェックポイントになります。この時点では並べるだけで、弦を押さえていなくてもいいです。
 この手の形は、どのポジションにおいても基本的に同じです。ただ、親指を指板の上に乗せる弾き方(いわゆる親指ポジション)のときは、少し手の形が違ってきます。これについては後述します。

弦を押さえてみる

 上記のように指を並べたまま、もう一度「左腕の重さののせ方の練習」と同じことをやってみます。手の力が抜けたままだと腕の重みが支えきれないので、はじめのうちは指に力が入るのは仕方ないでしょう。それでも握ったり引っ張ったりするような力のかけ方はしないようにします。重みがのってくると、自然に弦が沈んで指板に付き押さえた状態になっていきます。


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フィンガリングの実際

ポジション

 チェロは、弦を指で押さえることで音の高さを決めます。人間の左手の指は5本ですが、出すべき音はもっとたくさんあります。そのため、指が指板の上を動き回って弦を押さえることが必要になってきます。指板上の指(手)の位置を決めると、そこで出せる音の高さの範囲が決まってきます。ポジションとはその概念をあらわしたもので、指板上の手の位置を、低い方から第一・第二・第三・・・・・・という名前をつけて呼んでいます。演奏中にポジションを変えることをポジション移動と呼びます。それぞれのポジションの位置を身体と頭で理解して移動することで、いろいろな曲の演奏も容易になってきます。慣れてくると、無意識にポジションが決定できるようになってきますが、はじめのうちはゆっくり、よく考えて練習することをおすすめします。

指番号

 ポジションと同じように、便宜的に指にも番号をつけて呼んでいます。

  1. 人指し指
  2. 中指
  3. 薬指
  4. 小指

親指がありませんが、これは”0”の下に”,”がくっついたような記号であらわします。指番号としては、0となります。他に、開放弦も0であらわします。ピアノは、親指から1,2,・・・と番号がついていますが、チェロは親指が0で人指し指から1,2・・となりますので、混同しないようにしてください。

基本的な指の形

 チェロでは、指と指の間が半音または全音の間隔となるように弦を押さえます。楽器が大きいために全音間隔で押さえられるところは、基本的に1〜2指の間のみとなります。そうすると、基本的な指の開き方は次の2種類になります。ただし、実際に楽曲を弾く時や、高いポジションで弾く時、親指を使って弦を押さえているときなどは、例外もあります。

  1. 標準形
  2. 拡張形

1.標準形というのは、1〜4の指の間隔をすべて半音にして並べた形です。たとえば、C線の第一ポジションでは1指はD音、4指はF音となります(正確な音名表示ではありません。ご了承ください。)。2.拡張形は、1〜2指の間を全音間隔にし、あとは半音間隔で並べた形です。この場合は、C線の第一ポジションで1指はD音、4指はFis音となります。

ポジション・指の形と腕の関係

 前項に書いた2種類の指の形は、1指の位置を基準にしてポジション名が決まっています。しかし、同じポジションで拡張形を標準形にしたりする場合、動かすのは2〜4指の3本となり、動かないのは1指のみとなります。同時に3本の指を動かす事になり、同じポジション名ですが、実質的にはポジション移動とほぼ同じ動きをしないといけません。
 これに対し、標準形から半音下の拡張形のポジションへ移動する時を考えてみます。この場合、動かすのは1指のみであとの3本は動かさなくてよくなります。この時は、丸く押さえている1指をただ伸ばすだけで形が整います。つまり、実質的なポジション移動は存在しないのです。
 ポジションを決める時の基準となるのは、腕全体の形です。実際のポジション移動の方法については別項で記述しますので、ここでは、同じポジション内でも移動が存在すること、違うポジション間でも移動が存在しないことがある事を理解していただければ結構です。


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