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チェロ奏法-基本的事項


目次


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構えの基本

椅子について

 チェロを弾くときの姿勢は、まずリラックスして椅子に腰掛けることからはじまります。
 用意する椅子は、高くなく低くなく、背もたれにもたれ掛からずに背筋をぴんと伸ばして座れるものがよいです。また、足を地面と垂直になるようにした時に、膝が90度かややそれより広めになる位の高さの椅子がちょうどよいです。回転いすなど、座面が動くものは適しません。また、踏ん張ると床の上を滑ってしまうような椅子もよくないです。ひじ掛けが無いもので、背もたれは有っても無くてもかまいません。演奏会でよく見かけるのは、高さ調節のできる背もたれ付きのピアノ用椅子です。家庭用のリビングセットの椅子なら大体OKですが、好みもあるので自分で演奏用の椅子を用意した方がよいでしょう。椅子によって、かなり演奏のしやすさが違ってくることは確かです。

座ったときの姿勢

 比較的浅めに腰をかけ、膝を肩幅より少し広い程度に広げます。椅子に座ったら、楽器を持たずにまず背筋を伸ばします。右や左に傾かないこと。その上で、両肩・両腕・両手の力を抜いて腕より先を肩からぶら下げたような状態にします。ほかの人に肘を動かしてもらって、抵抗感なく自由に動けばOKです。ただし、かなりの重みは感じるはずなので、「抵抗感(筋肉に力が入っていることによるもの)」と「重さ(腕自身の重量)」を間違えないように認識すること。余計な力が入っていると、チェロを弾くときに楽器の響きを殺してしまうことになります。はじめのうちに、この脱力の感覚を身につけておくことをおすすめします。
 チェロを持たずにまずこの姿勢ができたら、次にチェロを持つ練習をします。

チェロを持ったときの姿勢

 基本的には上記の姿勢のままで、その中にチェロを置くような感じになります。あとは下の絵を参照してください。

構え方−正面     構え方−左側

 楽器と体との接点のポイントのみを下記に示します。

楽器側

体側

裏から見て右側上部の裏板の端にあたる。

正中線上で胸骨下端〜その上約5cm位までの間。

裏から見て左側下部の裏板の横、楽器横側中程の「凹」部分(中反り)のすぐ下側。

左膝内側。

エンドピンの先。

床。体の正中線の延長線上付近。

 エンドピンの長さも好みによります。長くすれば楽器が水平に近くなるし、短くすれば垂直に近くなる。楽器の角度は音色にも多大な影響を及ぼすため、自分に合った構えを研究してください。上記写真は、エンドピンが短めの演奏スタイルです。

やってはいけないこと

 初心者の場合、チェロを定位置に持ってくるとすぐに首や背骨が右に傾いてしまうことがよくあります。これはネックが顔のすぐ横にくるために、それをよけようとしてしまっているからでしょう。鏡をよく見て、チェロを持っても体が傾かないよう注意して練習しましょう。


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調弦(チューニング)

調弦の前に

 チェロを含む弦楽器にとって、常についてまわるのがこの調弦(チューニング)の問題です。ヴァイオリン族の楽器は、大体が4本の弦を持っています。この4本を完全5度間隔の音程(古楽器は若干違う場合がある)に合わせることを調弦(チューニング)といいます。他の楽器と一緒に演奏する場合は、そのうちの1本(たいていはA線)を他の楽器と合わせ、その上でその弦を基準にして他の3本を完全5度音程にします。
 調弦は、チェロを練習・演奏する前には必ずしなければいけないことです。しかし、調弦を正確にするということは、実際はとても難しいのです。現代はチューニングメーターという便利なものがありますが、これを使ってもなかなか正確な調弦はできません。自分の耳を鍛えて、それを頼りにするのが一番正確なようです。チェロは、自分の左手の指で直接音高をつくります。調弦ができない位の耳の正確さだと、指で押さえて出した音が正確な音高かどうかの判断もつきません。耳にとっても、チューニングは基本事項となります。まず、チューナーか音叉でA音を出して、その音にA線を合わせる練習が必要です。

完全5度の響き

 前の項にも書いたように、チェロは各弦を完全5度の音程に合わせるのが普通です。完全5度という音程は、振動数の比で表すと、3:2の関係になります。完全五5度の2つの音を同時に鳴らすと、2つの音が溶け合ってよく響いて聞こえます。この音程が少しでもずれていると、音が濁って聞こえます。この音の濁りを、「唸り(うなり)」といいます。
 唸りは、慣れないとただの音の濁りとしか認識できませんが、よく聞くと音の強弱が周期的に変わっているのが聞こえるはずです。この周期は、2音の音程が完全5度に近づくと段々ゆっくりになり、完全5度で唸りがなくなります。
 このことは、チューナー(音叉)のA音とA線とを合わせる時にも当てはまります。この時は、完全1度となり、最も濁りの少ない音程となります。また、完全5度よりも一般的には合わせやすいと思います。
 実際に完全5度の響きがどのようなものかを、開放弦の重音を例にお聞かせします。A=442Hzに合わせたチェロで、左列が少し広い(下の音が高い)音程、中央列がほぼ完全5度の音程、右列が少し狭い(下の音が低い)音程になっています。それぞれの響きをよく聞いて、響きの感覚をつかんで下さい。一番上段には、チューナーのA音(442Hz)とA線との1度音程のチューニングの音も入れてあります。

(REAL AUDIOのファイルです。RealPlayer3.0以上でお聞き下さい。)Real player G2

楽譜A−A↓

楽譜A−A

楽譜A−A↑

楽譜A−D↓

楽譜A−D

楽譜A−D↑

楽譜D−G↓

楽譜D−G

楽譜D−G↑

楽譜G−C↓

楽譜G−C

楽譜G−C↑

重音による調弦

 調弦の具体的な方法はいくつかありますが、ここでは重音を使った方法について書きます。重音については、右手の項目内に書いてあります。
 開放弦の重音での調弦は、重音がきちんと弾けないとなかなかうまく合いません。しかし、きちんとした音程感覚を身につけるためにもこの方法はマスターしたほうがよいと思います。重音がきちんと弾けなくても近くに弾ける人がいる場合には、その人に重音で調弦してもらい、その時の響きを聞いて合っているかどうかを判断する練習をすればよいのです。合っていない時の響きがわかるようになれば、調弦ができるだけの音程感覚が身についたといえるでしょう。
 完全5度があった時の響きが分かるようになれば、あとはその響きに弦を合わせるだけです。まず、重音を弾きながらどちらかの弦を端から押さえて音を少しずつ高くしていきます。どちらかの弦を押さえていった時に、必ず合うところがあるはずです。押さえた弦が高い音の方であるときは、音程が狭いので低い方の弦の音を低くします。逆のときは、低い方の弦の音を高くします。こうやって、A線から順番にC線までを合わせていきます。ペグで直接チューニングする場合は、この限りではありません。重音を弾きながらペグを回して音を合わせましょう。

倍音による調弦

 この項は、次の倍音の項の中に調弦の項を設けて記述します。


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倍音(ハーモニクス・フラジオレット)

倍音(ハーモニクス・フラジオレット)とは

 弦楽器は、弦を振動させることで音を発生させます。普通弦が振動するときは、両端が固定されて真ん中が最大の振幅となるような振動のしかたをしています。こういう振動のしかたのときに出る音を、「基音」といいます。弦は両端が固定されているだけなので、他にもいろいろな振動のしかたがあります。たとえば、両端だけでなく真ん中が固定されたような振動も可能です。同じように、真ん中とそのまた真ん中(要するに両端から1/4のところ)が固定されたようにも振動できます。また、両端から1/3のところが固定された状態でも振動できます。このように、弦の長さの1/整数のところが固定された状態で出る音を、「倍音(ハーモニクス・フラジオレット)」といいます。弦が倍音を生じるような振動をしているときに固定されているところを、振動の「節」といいます。

倍音の音程

 以下に、それぞれの弦で出すことのできる倍音を書いておきます。ただし、平均律の音階ではなく、開放弦から始まる純正律の音階としての音高となります。大きな音符が開放弦の音で、あとの小さな音譜が倍音です。それぞれ、左から開放弦の長さの1/1・1/2・1/3・1/4・1/5・・・・・の長さのところで出ます。基音から数えて10番目(開放弦の1/10の長さ・10音ともいう)の倍音までしか書いていませんが、これよりも高い倍音は無限にあります。

 

C線C線−倍音系列楽譜

 

G線G線−倍音系列楽譜

 

D線D線−倍音系列楽譜

 

A線A線−倍音系列楽譜

倍音(ハーモニクス・フラジオレット)による調弦

 前項目のそれぞれの弦の倍音を見て下さい。C線の3番目の音(G音)とG線の2番目の音(G音)は、同じ音高です。同じことが、G線とD線、D線とA線の間でもいえます。この同じ音高の音を合わせれば、チューニングができることになります。
 低いほうの弦を開放弦の1/3の長さ、高いほうの弦を開放弦の1/2の長さで振動させてあげればよいですから、高いほうの弦は弦の真ん中(開放弦より1オクターブ高い音の場所)、低いほうの弦は弦の駒から2/3のところ(実際には開放弦より5度高い音の場所)に指を触れてハーモニクスを鳴らして比較します。1本ずつ音を出しても、2本同時に出してもよいです。同じ音の高さになるように合わせてあげればよいだけです。はじめのうちは重音がきちんと出せない事が多いので、1本ずつ鳴らして比較する方が合わせやすいかもしれません。

倍音(ハーモニクス・フラジオレット)の精度

 開放弦に対する倍音は、理論的には正確な純正律の音程になります。しかし、実際には弦に太さがあるし、弦の節の部分に触れている指にも太さがあり、理論通りに点接触しているわけではありません。そのために、指が正確に弦の長さのM/N(M,N=整数,M<N)のところに触れていない場合、出てくる音程が微妙に狂ってきます。曲の中で出てくる経過音のような時には気にならない程度の狂い方ですが、チューニングの時などは開放弦の重音が合っていなくても倍音で合わせると合っているように聞こえることもよくあります。いくら倍音といっても、弦上の正確な位置に触れないと正確な音程が出ないことは知っておいてください。
 また、弦が古くなってくると、弦の均一性が失われてきて、正確な位置に触れていても正確な音程が出ないこともあります。例えば、弦の一部のみが少し錆びていたとすると、その部分と他の部分の線密度が違ってきます。そんな場合、たとえ弦の真ん中に触れたとしても、そこを節にして弦が振動していないために出てくる音程が違ってきてしまうことになります。弦の寿命は弾く頻度、時間によって違いますが、何年も同じ弦を張ったりしているのは考えものです。音が悪くなってきたなと思ったら、こまめに弦を交換するようにしましょう。


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付録:バロックチェロの構え方について

はじめに

 現代のチェロには、普通「エンドピン」といわれる金属または木質の細長い棒が付いています。これを床に突き刺して楽器を構えるのが普通です。しかし、チェロのエンドピンの歴史は、チェロそのものの歴史に比較するとそう長いものではありません。その昔、チェロには、ヴァイオリンと同じような「ぽっち」のようなエンドピンしかついていなかったのです。
 現代のチェロ奏者の中でエンドピン無しで演奏できる人の割合は、プロ・アマチュアをひっくるめて考えてもそう多くはないと思います。「長いエンドピン(ヴァイオリン様のエンドピンに対する表現)」がないと弾けない人の方が圧倒的に多いのが現状です。しかし、「長いエンドピン」が無かった時代は、どうやってチェロを演奏していたのでしょうか。昔の絵を見ると、床に置いていたり、台の上に乗せて高さを稼いでいたりするものもあります。その中で最も一般的だと思われるのが、「足に乗せる」構え方です。あえて「足で挟む」と書かなかったのは、その表現が誤解を生みやすいからです。現在では、バロックチェロを弾く奏者がこの構え方をしています。
 この「足に乗せる」構え方ですが、初めてこの構え方をしてもらうと、ほとんど皆がしんどいと言います。チェロが下にずり落ちると。これは、「足で挟む」という行為をしているためで、構え方自体ができていないからです。実際に「足に乗せる」構え方をきちんと覚えると、驚くほど自然に、しかも楽にチェロを構えることができます。逆に、エンドピンが床に固定されていない分、体が動きやすくなり、表現が自由にできる部分もでてきます。ヴァイオリンに匹敵するくらいの体の自由度が確保されるともいえるでしょうか。
 チェロの構え方の歴史の中で、初期はこうであったであろうという構えを身につけると、「長いエンドピン」を使って演奏するときにも役に立ちます。何となくチェロが落ち着かないような構えをしていた人でも、体とチェロの距離感が縮まって構えがなじんできやすくなります。みなさんも、この「足に乗せる」構え方を一度練習されることをおすすめします。だまされたと思ってやってみて下さい。必ずや、チェロ演奏の世界が広がることでしょう。

バロックチェロの構え方

 椅子についてと、座ったときの姿勢は、構えの基本に書いたことと同じです。ここでは、座ったあとのことから書いていきます。
 まず、足の格好です。膝は肩幅よりやや広めくらいに広げます。膝はその位置で、足先を体の横向き外側方向に向けぎみにして左右の足首を10cmくらいの距離まで近づけます。この時、足首は膝より前方になります。
 この格好を基本にして、チェロを体にはめ込んでいきます。まず、足の上にチェロのボディーを乗せます。先ほどの格好ができているとすれば、両足のふくらはぎが内側を向いて体の前方に斜めにあるはずですので、そのふくらはぎの上にボディを乗せるのです。
 それができたら、今度は両足の間にボディをはめ込みます。先ほどの格好で両足の間が一番広い部分は膝のはずなので、その付近に一番幅の広い部分がくるようにはめこみます。あとは、ボディの上部を、ネックが頭の左側にくるようにして胸部に当てるのみです。ネックと頭が当たりそうな場合は、右足でネックがもう少し左上になるように調節しましょう。ボディの下部が体の真ん中にあるわけですから、ネックは当然左斜め上に向きます。この構え方では、楽器が体に対して斜めになってよいのです。
 こうやって構えてみると、楽器の位置は普段より少々高いものの、思っているよりも楽なのがお分かりいただけると思います。もし、持っていてチェロが下にずり落ちたり疲れたりする場合は、構え方が違っていることが多いです。正しく構えられているかどうかは、ネックを持ってチェロを前後に動かしてみるとよく分かります。きちんと構えている場合は、両膝の内側(チェロの横幅の一番広いところ)を支点にして前後に自由に動きます。動かすのに抵抗感のある場合は、足で挟んで構えてしまっていることが多いです。

弓を持って演奏してみよう!

 別に、弓の持ち方までバロック風にする必要はありません。もちろん、チューニングもA=415なんかにしなくても普通でいいです(してもいいですが)。今までどうりに弓を持って演奏してみて下さい。いくつか勝手の違うところがあると思いますが、概ね演奏に支障はないと思います。
 今までと勝手の違うところを、いくつかの原因に整理してまとめてみます。

  1. チェロの位置が高い
  2. チェロの角度が垂直に近い
  3. 正面から見てチェロが体に対して斜めになる

大きく分けると、この3つ位になるでしょうか。
 まず、1についてです。胸部に圧迫感がある・左手を上方にもっていかないといけないなどの原因になります。しかし、裏を返せば、ほら、駒が近くて右手が楽に届くでしょう。左手は練習すればすぐに慣れますが、右手の場合は弾く位置が体から遠くなるといくら練習しても届きません。
 次に、2についてです。右手の重みが乗らない、左手に違和感があるなどの原因になります。が、本当に重みが乗らないのでしょうか。いくら垂直に近いとはいえ、完全に垂直になっているわけではありません。チェロを弾くときの右手は、基本的に肩からぶら下げたような格好になっているので、無駄な力が抜けていればそれでも重みは乗るはずです。重みが乗らないのは、弾き方のせいではないでしょうか。左手の違和感は、練習すれば何とかなります。
 最後に、3です。これで困るのは、今までどおりに弾くと弓が向こうに行き過ぎる事くらいではないでしょうか。だったら、弓の角度をもっと自分寄りにしてあげればすみます。今までよりも楽じゃないですか。
 以上のように、バロックチェロのような構え方をしたときに出てくる問題は、ほとんどが左手であり、慣れが解決してくれるものばかりです。右手に関しては、「長いエンドピン」を使って弾いているときと比べると、数段楽になります。これでより自由に動けるわけですから、良いことずくめではないですか。ただ一つ、「長いエンドピン」を使って弾いているときの優点は、「床がチェロと一緒に振動する」ことです。つまり、音量の面では絶対的に優位であるということです。この1点だけでも、「長いエンドピン」を使う意味があるというものです。
 現代のチェロの構え方に関していえば、バロックチェロの構え方を研究することは非常に意味のあることだと思います。特にチェロと体の一体感は、「長いエンドピン」を使ったひきかたではなかなか得難いものがあります。どちらの構え方も一長一短がありますが、お互いの利点を取り入れて、自分に合ったよりよい構え方をつくっていくのが大切なのではないでしょうか。


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